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YUKIYO URABAYASHI  ミラクルに生きる



Circle in HIMEJI 2022Sprout 

「美の多様性を表現する」

 

抗がん剤治療後のヘアカットセレモニーの中で新しいメッセージを宿すアート作品創作(ヘアデザインによる命のアート表現)過程のBACK STORYを綴った動画を作成しました

(動画、PHOTO by SAYURI)


モデルさんも私も、抗がん剤治療の方はもちろん、身体や心に不安のある方に少しでもお役に立てればという気持ちで、このプロジェクトを立ち上げました。




Back story 浦林幸代


32才のとき、次女が生まれて10か月のころ、授乳中の左胸にしこりがあるのに気づいた。当時は看護師の仕事をしていた。悪性ではないことを確認しておきたくて受診しエコー検査をして、悪性ではないと診断された。 ところが半年後(2010年)、しこりは大きくなり悪性と診断された。 他の臓器に転移したら危険なので、まず抗がん剤、その後手術、放射線、ホルモン療法を受けた。 ウィッグは病院で教えてもらったお店に行き、合わせてもらって用意したがほとんど被らず、帽子で過ごした。 抗がん剤で抜けていた髪が十分に生えてきた頃に、仕事に復帰した。 手術から2年が経つ頃には、ほぼ普通に生活をしていた。 2020年11月、術後10年が経ち、最後の定期検診で転移が発覚した。肝臓、骨、多数のリンパ節に転移があったのでステージ4の診断。抗がん剤治療をずっと続けて、ガンの勢いを押さえながら共存するという方針になった。食欲が落ちて、体中が痛くて、ほんとにしんどかった。ウィッグはネットで探し、以前より安くて種類も豊富で、何個か購入し愛用している。 こどもたちはまだ中学生で、まだまだ生きたいと思った。もし抗がん剤が効かなかったら、と不安は強くていろんな治療法やできることを探したけど、自分の力を最大限高めることが一番大事だと気付き、全力を尽くした。 抗がん剤を始めて1年が経ったころには、腫瘍マーカーは正常値になり、副作用の方が強くなったので2022年1月を最後に一旦中止することになり、ホルモン療法に切り替え、現在に至る。





【レポート】


「ヘアデザインによる生命のアート表現」を

開催


抗がん剤治療後の髪を活かして、

美の多様性を表現する


現代美術作家 SAYURI USHIO~

STEP BONE CUT

(小顔補正立体カット) 考案者



現代美術家SAYURI USHIOは、2022年8月2日(火)、「ヘアデザインによる生命のアート表現」として、「抗がん剤治療の脱毛は美しい “隠すから魅せる”」を制作した。


SAYURIは、STEP BONE CUT(小顔補正立体ヘアカット/特許取得済み)考案者であり、ヘアデザイナーでもある。「ヘアデザインによる生命のアート表現」は、ワーク・イン・プログレス(公開制作)をコンセプトとし、切る人と切られる人の関係性が作り上げられるプロセスを、アート作品とする。


■乳がんの再発を経て、変わる覚悟


この日ヘアカットのモデルとなったのは、2010年に乳がんを宣告された浦林幸代さん。幸代さんは、抗がん剤投与、そして手術ののち、放射線やホルモン療法などを受けながら、仕事にも復帰。目安としていた「術後10年、再発・転移がなければ大丈夫」の域まであと一歩というタイミングで、転移が発覚。再度、抗がん剤治療がスタートした。


頭髪が抜け落ちた頭は、ウィッグで隠した。医者には「一生、抗がん剤は手放せない」と言われた。幸代さんは看護師だ。多くの患者を見てきて、自分でも「ずっと抗がん剤。ずっとウィッグ」を覚悟していた。


一方で、まだ10代の娘二人のためにも「生きたい」という思いは強かった。免疫力を高めることなど、できることは全力でやった。その結果、腫瘍マーカーは正常値になり、2022年1月を最後に抗がん剤は一旦中止。

生えてきた髪が、ウィッグからはみ出すようになり、「髪を整えたい。でも、美容院で生えかけの髪を切ってもらうのは、気が引ける」とパソコンに向かい、「美容院」「抗がん剤治療」「脱毛」などのワードを打ち込んだ。検索の結果、SAYURIが「ヘアデザインによる命のアート表現」の一環として、がんサバイバーのヘアカットをしているという記事を見つけた。


モデル募集の条件には、「ライブ配信や写真などを公開可能な方」とある。幸代さんは「自分を見せることは、勇気が必要だった」と言うが、会場である『TICK-TOCK Airlineはなれ』(兵庫県姫路市)に現れた幸代さんの顔からは、変わる自分への覚悟が感じられた。



■そこは、切る人と切られる人が作り出すアート空間


予定の時間になると、SAYURIも幸代さんも、白い衣装をまとって登場した。SAYURIは「白は清浄な色だから。仏教儀式も白でしょ」と言う。そう、これから始まるのは、アート・パフォーマンスであり、セレモニー(儀式)なのだ。


SAYURIにとって髪は生き物であり、命だ。地球から植物が生えるように、頭から生える髪は生きている。だから、ヘアカットは神聖なセレモニーであり、命のアート。


セレモニーの始まり。SAYURIは、アロマの香りをまとい、オリジナルのヒーリング音楽を流し、鐘の音を響き渡らせる。

幸代さんの頭部から顔にかけて、STEP BONE CUT PRODUCTS(SBCP)の 生ミネラルミストを吹きかける。まるで植物に水をやるように。

頭、顔から首筋、肩まで、丁寧にマッサージしながらリンパを流していく。体に溜まった不要なものを流す浄化のプロセスだ。幸代さんの顔が紅潮し、目がひと回り大きくなる。


鏡の中の自分を見つめながら、「ずっとストレートヘアに憧れていた」と言う幸代さんに、SAYURI

は「クセは活かしましょう。生えたての毛の柔らかさも活かして、かわいい感じに」と笑う。命である髪のありのままを活かす。それが、STEP BONE CUTのアート。


脱毛後に生えた髪は、赤ちゃんの毛のように柔らかい。SAYURIは、「その柔らかさを活かして、後頭部にボリュームをつけて」と言いながら、サラサラとイメージデッサンを描いていく。スケッチブックには、パリの街角にいそうなベリーショートの女性の横顔。


「日本人は、普段なかなかベリーショートにしないでしょ?でも、ベリーショットって、すごくカッコいいのよ」とSAYURI。抗がん剤治療による脱毛後、髪が生えて数ヶ月から半年のタイミングは、ベリーショートを楽しむ絶好のタイミングだ。


ヘアカットの際は、椅子に座るのがSAYURIスタイル。なるべく髪と同じ目線になるように。なぜなら、SAYURIにとって、ヘアカットは髪との対話の時間だから。SAYURI には、髪の声が聞こえる。「髪に触り、髪を感じるから」。


髪を切りながら、SAYURIは幸代さんに話しかける。

「がんばりましたね。もう、がんばらなくて良いんですよ」


幸代さんは、それに答えて言う。

「がんばりました。転移後ここまで元気になれるとは、誰も思っていなかったので、命をもらった感覚。この1年半、ミラクルを起こしています」


SAYURIが続ける。

「今、何を一番したいですか」


幸代さんは、しばらく黙った後、答える。

「今までの人生、特に子どもが生まれてからは、自分が何をしたいか、考えたことがなかった気がします。ガンを告知された後も、命をつなぐことに精一杯で、何かをしたいというのはなくて」

「そうだ。今、体を動かしたい。好きな音楽に合わせて、思いきり体を動かしたい」


「元気な人でも、あれこれ理由をつけて、やらないですよね。いつまで経っても、本当にやりたいことをやらないで、人生を終える人もいる」(SAYURI)


「まさに私がそうでした。これからは、『やらないといけない』と思い込んでいたことをやめて、自由になりたい」(幸代さん)


SAYURIとの会話の中から、幸代さんの言葉が引き出されていく。



■ヘアカットで祝福された命が、輝きはじめる


髪を切られる立場の人にとって、その時間は、鏡の中の自分を見つめ、自分と対話する時間だ。

SAYURIは言う。「ここにいるときは、自分の中心、つまり本来の自分に戻る時間。不要なもの、思い込みの気持ち、俗世間で身につけた自分をよく見せるための飾りは、すべて不要。髪を切ることで、それらを捨て去り、真っ白な気持ちを取り戻して」


SAYURIにとってヘアカットは、命を祝福するセレモニーだ。命のありのままの姿を愛おしみながら、髪を切る。「何もかも、そのままがいい。自分の人生は自分が主人公」。


そんな言葉を聞きながら、幸代さんの顔が輝いていく。

病(やまい)と戦うのではなく、病に寄り添い解き放すためのヘアカット。髪が切られ、過去を捨て去る。身も心も解放され、軽く自由になり、命が輝く。


そのプロセスに、感動が生まれる。心を動かすものがアートだとすれば、このセレモニーは、やはりアートだ。


生まれ変わった幸代さんを見て、SAYURIは思わず「かわいい!」と声をあげる。


「心の何かが落ちてスッキリ。そしてワクワクする」と幸代さん。


以前の幸代さんは、「人を信用していない」「本心を出せていない」という自覚があった。自信も失っていた。

「家族や友達が『命を諦めなくてもいい』と言ってくれたから、ミラクルを起こせた。でも、その感謝すら伝えきれていなかった。これからは、もっと自分の気持ちを、自分自身を出したい」


「ヘアデザインによる生命のアート表現」では、ヘアカットされたモデルが、白いTシャツに言葉を記す。

幸代さんの言葉は「ミラクルに生きる!」

SAYURIとの会話の中で、自身の内側から出てきた言葉だ。


自身が刻んだ言葉を胸に写真を撮って、セレモニーは終わる。


床には、SAYURIが「死体」と呼ぶ、切り落とされた髪が落ちていた。その「死体」もまた、美しい。



■「ヘアデザインによる生命のアート表現」について


「ヘアデザインによる生命のアート表現」の始まりは、ニューヨーク・ブルックリン。

「国籍、年齢、性別、障害のあるなしにかかわらず全ての制限から解放する社会実験。果敢に立ち向かっている人を応援し、障害が有るから無いの世界に挑む、心を開放する生まれ変わりのセレモニー」として制作された。


その後、山形大石田でも制作され、2022年10月には福岡八女、11月には東ヨーロッパ(ウクライナ、クロアチアほか)でも予定されている。

今後も、日本および世界各地で、ソーシャル·エンゲージド·アート(社会と深く関わるアート)の試みとして、現地で暮らす人々をモデルに行っていく。

今回のような、がんサバイバーをモデルとした「抗がん剤治療の脱毛は美しい “隠すから魅せる”」は、『TICK-TOCK Airlineはなれ』(兵庫県姫路市紺屋町82)で制作。モデルは随時募集している。


お問い合わせはこちら。


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SAYURI USHIO 公式サイト

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